どうせなら笑って過ごそうよ!

闘う杏子さんのお話 日常の中の笑いの数々 笑って過ごしても泣いて過ごしても同じ一生。それなら笑って過ごしたい!

エピ57 ほうれん草と青いクマ

寄せては引き、引いては寄せる波のように、あの袴田さんの結婚披露パーティのことがフラッシュバックする1週間を何とか乗り切った杏子。
あの時は笑の渦の中で、杏子の気持ちも紛れていたが、そんなに簡単に頭の中から消えるものではないことが分かった。
すっかり忘れていたことだったのに。
現状から逃げるために転職したという自分がなんだか情けなく思えてきたりもした。
杏子は、自分がまるで、あれから全く成長していないように感じていた。
また、立ち直るのに時間がかかりそうだと思った。

それでも、ライフ ゴーズ オン。
日常は続く。
職場では今目の前にあるすべきことを片付けることに専念しよう。
そう自分に言い聞かせながら、出社する杏子だった。

その日、杏子はなぜだか、どうしてもお昼につけ麺が食べたくなった。
あいにく、かおりさんはお昼当番の日だった。
誘う相手もなかったので、一人で10分歩いて人気つけ麺店に行き、さっさと食べて、
オフィスに戻ってきた。
ふと見ると、珍しく田中さんと水沢さんがオフィスに戻ってきていた。
日中に二人がそこにいることはめったにないことだった。
しかも田中さんの表情はいつになく険しく、また、水沢さんはずっと下を向いていた。
何かあったようだ。
個性豊かな面々がそろったソラリア航空日本支社において、小さなもめ事は日常茶飯事だ。
それでも、杏子は気になってしょうがなかった。
田中さんの、
「やっぱり、ホウレンソウって大事なんだよな。次からは気を付けてくれよ。
外人には俺から話しておくから。」
という言葉だけがはっきり聞こえてきた。
それで2者会談は終わったようだ。

だいたいの事件は、必ず杏子の耳に入ってくる。
今回も、例によって、タンさんが教えてくれた。
田中さんから報告があったそうだ。
水沢さんととある旅行代理店の間で話の行き違いがあったそうだ。
どうも水沢さんの側に非があったようだった。
金額面で間違った案内をしたらしい。
その穴埋めとして、水沢さんが勝手に代替案を提示した。
水沢さんとしては、それでいいと思ったのだろう。
まずは、間違いに関して謝罪すべきだったはずだ。
旅行代理店側は、それが不誠実だということで、
上司である田中さんに抗議してきたというのが事件の概要だ。
結果、田中さんはタンさんに相談して、わび状を作り、また
代金の差異については、後日別件で調整として、何とかその場を治めた。
田中さんの言っていたほうれん草は、別にビタミンや鉄分を
取れということではなく、報告・連絡・相談の頭文字を取ったものだったのだ。

杏子にとっては、その言葉は前の会社に勤めていた時、上司がしょっちゅう言っていたので
新しくはなかった。
おそらく、会社勤めをしている人間なら一度は耳にする言葉だろうと思った。

その言葉で、杏子はもう一つの言葉を思い出した。
それは、青いクマ。
以前、本か新聞で見たのだ。
杏子はその時、これこそ会社勤めはおろか、人生で大事なことだなぁと思った。
なのに、しばらくの間、すっかり忘れていた。

あせるな・おこるな・いばるな・くさるな・まけるな
の頭文字を取ったものだ。

杏子は、一時期、その言葉を毎日つぶやいていた。
確かに、焦るとろくなことがない。
焦った時こそ、一呼吸おいて、落ち着いてから物事を進めた方が良かった。
怒ると自分だけがイライラして、損するのも自分だけだった。
威張り散らす人は、周りの人が敬遠する。
くさったところで、何もすすまない。
負けるなは結局自分に負けるなということか。

よく考えると、それは全部いつもタンさんに怒られてる時に
言われていることでもあった。
今気が付いた。

今の自分は昨日までの自分で出来ている。
どんなに嫌なことがあっても、つらいことがあっても、
たぶん、その次に同じことがあっら、それが嫌でもなく、つらくもないのかも知れない。

杏子が入社して、はや一年が過ぎていた。
一時的に、ちょっとだけ後ろ向きな気分だった。
ちゃんと前を向かないと。
やっと気分が心を落ち着かせた杏子だった。

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