どうせなら笑って過ごそうよ!

闘う杏子さんのお話 日常の中の笑いの数々 笑って過ごしても泣いて過ごしても同じ一生。それなら笑って過ごしたい!

エピ49  裁判長、寛大なご措置に感謝します (その1)

タンさんの友人がプライベートで日本にやって来た。
彼もまたソラリア航空の社員だ。
タンさんとほぼ同期の入社で15年前、初めて配属された部署で机を並べた仲だと聞いていた。
タンさんとは、同じ中国系で、英国留学を経て、海外の政府機関でしばらく働いた後、ソラリア航空に入社した経緯までとても似ていた。
ただ一つ大きく違ったのは、タンさんが独身で、その友人は妻と子供二人がいることだった。
彼の名前はリムさん。
奥様はパトリシアさん。
今回は、子供2人をご両親に預けての2人だけの日本旅行だった。
到着したのは木曜日のフライトで、タンさんが丸さん運転の社用車で成田まで迎えに行き、ホテルまで送り届けたのだった。
タンさんは独り身には無駄にだだっ広い自分の社宅に彼らを招待したが、リムさんはタンさんが独身で家事をしない事が分かっていたので遠慮してホテルを予約してもらっただけで終わった。
杏子は正解だと思った。
下手をするとパトリシアさんが家事をやる羽目になっただろう。
海外旅行では、たとえ親しい友人の家でも、気を使ってしまう。
おまけに、どう考えても家事など一切しそうにない独身男性の家だ。
不都合だらけだと想像するのは難しくない。
夕方到着のフライトだったので、都内のホテル到着後、そのまま3人で食事に出かけ、タンさんはオフィスには戻ってこなかった。
丸さんは、ホテルまで送り届けて本日の勤務終了で解放された。
金曜日の朝、タンさんはリムさん夫妻を連れてオフィスに朝11時ごろやって来た。
リムさんは, タンさんとは違って、ダンディな感じの素敵な男性だった。
タンさんは、どこから見ても大人ののび太だった。
杏子は一日一回はそう思ってこれまで一緒に仕事をしてきた。
そして、その奥さまはとても40代半ばとは思えないスレンダーなスタイルの美人だった。
杏子は、彼らがオフィスに入って来た瞬間、中国の映画スターが入って来たかと思ったほどだった。
だからといって、スター気どりではなく、とても腰の低い、親しみのある感じの2人だった。
その笑顔も、見た瞬間お互いの距離が縮まるような、とても人懐っこいものだった。
タンさんが杏子に2人を紹介した。
杏子は軽く挨拶して、
「今日はどこに行く予定ですか?」
と聞くと、
リムさんは、
「ワイフが買い物がしたいって言うんだよ。そしたら、タンがオフィスの近くにデパートがあるからって連れてきてくれたんだ。ここから歩いて行けるんだよね?後で地図とかで説明してくれるかな?」
と言うので、
「私のボスがOKだったら、そこまでお連れしますけどね。」
とタンさんの方をちらっと見た。
タンさんは、
「それはありがたいな。お願いしていいかな?僕の友人をよろしくね。その前にランチに行くから、君も一緒に行く?」
とにこやかに答えた。
杏子はお言葉に甘えて豪華な懐石料理をごちそうになった。
杏子のモチベーションは上がりまくった。
昼食後、いったんオフィスに戻ってから、タンさんを残して、杏子とリム夫妻で銀座のデパートまで歩いた。
その途中、いかにタンさんとリムさんが仲良くなったか、そして奥さまとはどこで知り合い結婚したかなどいろいろな話をした。
杏子は、その会話から、リム夫妻がとても心の広い優しい二人だと確信した。
デパートに着くと、奥様のパトリシアさんの表情がパッと明るくなったのが丸わかりだった。
血流が一気に活発になったのだろうか、まるで絵に描いたような輝き方だった。
世界のどこに行っても女性のショッピングに対する情熱は変わらないようだ。
リムさんが言った。
「僕たちはこの辺で時間つぶすからもう大丈夫。帰りはタクシーでホテルに帰るから。ありがとうね!」
そう言われたので、杏子は
「じゃあ、楽しんでくださいね。何かあったら、遠慮しないで電話下さい。」
と二人を残して、オフィスに戻った。