どうせなら笑って過ごそうよ!

闘う杏子さんのお話 日常の中の笑いの数々 笑って過ごしても泣いて過ごしても同じ一生。それなら笑って過ごしたい!

エピ48  真面目な珍味 その1 

名取さんと皆川さんが晴れてソラリア航空日本支社の一員となった。
初日は両名とも都内のオフィスに来ることになっていた。
そして、朝10時までにそれぞれカウンターにやって来た。
おそらくほぼ同時にやって来たようだった。
応対した沙羅ちゃんが内線で杏子を呼んだ。
杏子は、いったんオフィスの外に出てからカウンターに廻り、二人を奥の社員用入口の方に案内した。
オフィスの中に入って、まずはタンさんのいる支社長室に連れて行った。
杏子がタンさんに声をかけると、タンさんは満面の笑みで立ちあがり、二人を中へと招き入れた。
そして二人は促されてタンさんのデスクの前の椅子に腰をおろした。 
杏子がその場をはずして、3人での雑談が10分ほどあっただろうか。
タンさんが杏子を呼んで2人をスタッフに紹介してくるようにと指示した。
まずは旅客営業の田中さんと水沢さんからまわることにした。
田中さんはすでに二人を知っているので軽い挨拶で終わった。
水沢さんも出かける寸前と言うこともあってか、意外と簡単な会話で終った。

次に向かった貨物課では、進藤さんと上村さんが嬉しそうに待っていた。
杏子にはある予感があった。
もしかしたら進藤さんは名取さんに、
「あなた珍味とか呼ばれたことない?」
とか言っちゃうんじゃないかと思ったのだ。
進藤さんは、名取さんを紹介するなり、
「なとりの珍味ってあるじゃない? あんたそれでからかわれたりしない?」
と名取さんに言った。
杏子には予言者の素質があるのかもしれない。
なんのことはない。
丸さんの時に似たようなことがあったから、なんとなくやるんじゃないかと思っただけだったのだ。
ところが、そんなおふざけに対しても真面目マンはどこまでも律儀だった。
「進藤さんとおっしゃいましたっけ?実に面白い事をおっしゃる方ですね。ふぇっふぇっふえっ!なるほどねぇ。なとりの珍味ですかー。これは愉快だ。ふぇっふぇっふえっ!」
進藤さんどころか、上村さんと杏子、そして、皆川さんまで凍りついた。
真面目マンはどんなに大きな火災も瞬時に鎮火する零下の笑いのセンスと、これまた、どう突っ込んで言いのわからないような摩訶不思議な宇宙人のような笑い声を持っていた。
一瞬誰も何も言えなくなった。
その一瞬がいつもの一瞬の100倍ほど長く感じさせるくらいの衝撃だった。
すご過ぎるよ真面目マン!
時間をかけて気を取り直した進藤さんは、すべてなかったことにして、今度はひょろっとした背の高い若者皆川さんに矛先を向けた。
真面目マンと関わらない方がいいと判断したようだった。
「そうか君が刈谷君の相棒か。あいつは本当にいいやつだよ。こっちだけどね。」
と右手を左ほおの横に持って行って独特の意味を示すポーズをした。
皆川さんにはそのことはちょっと話してあったので、別に驚きはしなかった。
ただ苦笑いはしていた。
進藤さんはちょっとだけかき乱したかったのに、名取さんで空振りだったので、何とかリベンジしたかったのだろう。
その進藤さんにとどめを刺したのは結局真面目マンだった。
「へぇー!なかなか興味深い事をおっしゃいましたが、それは、その刈谷さんという方が、つまり、そのー、我々一般男性とはちょっと違った嗜好をお持ちと言うことなのですか?」
杏子は吹き出しそうになった。
でも何とか抑えた。
でも、上村さんはすでに顔が笑っている。
こんなに困った進藤さんをあまり見た事が無かったのだ。
進藤さんは脱力したように返事をした。
「そう、お持ちなんだよね。でも、仕事はまじめでユーモアもあるいいやつだよ。ねっ!
杏子ちゃん?」
たとえば、テレビ中継なんかだと、現場からスタジオにお返ししますと言う感じだっただろうか。
「今後ともよろしくお願いしますね!」
「じゃあ、次はカウンターの女性3人をご紹介しましょう。こちらです。」
と杏子は進藤さんを真面目マンの呪縛から解き放ってあげた。

なとり オールスター珍味プレー 175g

なとり オールスター珍味プレー 175g