どうせなら笑って過ごそうよ!

闘う杏子さんのお話 日常の中の笑いの数々 笑って過ごしても泣いて過ごしても同じ一生。それなら笑って過ごしたい!

秘書の頑張りどころ - ボスだってのんびりしたい (エピ20)

 

ソラリア航空は当面火、木、土週3便の運航だった。

 

初便の発着が木曜日だったので 土曜日まで一日ぽっかり空いている。

 

ソラリア航空の費用で来日した一行にとっては、得した気分だろう。

 

毎日運航だったら、翌日には帰国することになっていたはずだ。

 

観光大臣は在日本ソラリア国大使がもてなすことになっていた。

 

報道陣やトップ企業の代表たちはソラリア航空が手配した観光バスで都内観光だ。

 

夜は、宿泊施設内の指定レストランで自由に食事してもらうことになっていた。

 

社長は日本支社オフィスにて丸一日会議の予定だった。

 

朝、タンさんを乗せた車で丸さんがホテルもまわり、社長を乗せてオフィスに来る。

 

その日杏子は、二人のボスに仕えることになる。

 

社長への連絡は本国にいる秘書からひっきりなしに連絡がくるはずだ。

 

案の定、朝から数件の社長へのメッセージが入っていた。

 

他の重役からも電話がかかってくる可能性もあるのだ。緊張する。

 

 

 

タンさんは杏子の目から見ても明らかなひきつった作り笑いとともに社長をオフィスに連れてきた。タンさんの笑顔があまりに不自然過ぎて杏子は心配になった。

 

タンさん、緊張しすぎじゃないか…

 

そう思いながらも、杏子はすっと立ち上がって社長に向かってお辞儀した。社長は、にっこり笑い返してくれた。

 

タンさんはオフィスのスペースを見せながら、各スタッフを紹介した。

 

一通り終わると支社長室へ入って言った。

 

 

 

そして、

 

「ナカノサン!」

 

タンさんが呼んだ。

 

杏子が慌てて入っていくと、

 

「社長に何かメッセージは入ってきているか?」

 

とたずねた。

 

杏子は、数件の連絡事項を書いたメモ書きをタンさんに渡す。

 

「ありがとう。」

 

それで杏子の用はすんだらしい。

 

しばらく、社長はあちこち電話していた。

 

その間に、杏子は会議室の準備の最終確認をした。

 

本日の議題をまとめたプリントアウト、ホワイトボード、プロジェクターの準備、筆記用具やメモ用紙。そして、ミネラルウォーター。

 

10時には近くの喫茶店から、コーヒーとケーキの出前の準備もしてある。

 

午後3時にももう一度だ。

 

ソラリア国は旧英連邦の国なので、英国風にティーブレークするらしい。

 

ティーブレークなのに注文するのはコーヒーだった。杏子はちょっと納得いかなかった。

 

でも、タンさんに聞いたら長くなりそうだし、じゃあ紅茶もなんて言われたら困るので、指示された通り、コーヒーで統一した。

 

 

 

タンさんが良いと言うので、2回ともスタッフ分も注文した。

 

今日もご褒美があった。

 

2回目はアイスがいいな。

 

人は恵まれると、さらなる欲が現れる。

 

杏子は一瞬でも、邪まなことを考えた自分を恥じた。

 

 

 

ランチは社長とスタッフ全員でということで、近くのホテルの和食会席を予約してある。

 

もちろん、肉抜き、アルコール抜きだ。タンさんは一切田中さんを無視して決めていた。

 

正解!

 

おそらく、他の航空会社の支社長連中からいろいろ情報を得て、そこに決めたのだろう。

 

お昼前には空港オフィスの刈谷さん、倉本さんもこちらにやって来た。

 

費用は社長持ちだそうだ。慰労の意味もあるのだろう。

 

 

 

社長は、午前中に旅客営業や予約発券課と、午後は、前半貨物課、後半は空港スタッフとそれぞれ会議する予定だった。

 

 

 

タンさんもすべてに同席した。

 

国際電話以外はつなぐなといわれた。

 

逆に言うと国際電話はつなげということだ。

 

今日かかってくる国際電話は間違いなく社長がらみだからだろう。

 

 

 

結局、会議途中で国際電話がかかるほどの緊急事態はなかった。

 

 

 

会議を終えた社長はタンさんと全員に一言ずつ声をかけた後、タンさんとともに去った。

 

 

 

杏子はやっと肩の力が抜ける感じがした。

 

 

 

土曜日の夕方、社長は帰国した。タンさんはもちろん見送りに行った。

 

これでタンさんも肩の力が抜けるだろう。

 

それでも、タンさんのことだから、やっと本来の仕事に戻れると思って、月曜日は意気込んでやって来るかもしれない。油断してはいけないのだ。

 

 

 

月曜日のタンさんは、解き放たれた顔をしていた。

 

定期便就航によって、現地の新聞も届くようになっていたので、朝から新聞をずっと読んでいた。仕事しようという雰囲気がすこしもない。一日ぐらいのんびりししたいと言うことか。

 

 

 

緩やかに時間が過ぎていた。ちらっと支社長室を覗くと、タンさんは椅子の背もたれにふんぞり帰って新聞を広げていた。

 

 

 

杏子の席の電話がなった。

 

発信番号が明らかに、ソラリア国。

 

「ハロー」

 

電話に出ると、社長の秘書だった。

 

社長がタンさんに話があるとのこと。

 

杏子は支社長室にいって、

 

「タンさん、社長から電話です。」

 

と言った瞬間、

 

テレビのコントでも見たことないくらいの見事な狼狽ぶりで、

 

椅子から飛び上り、持っていた新聞をあたふたと畳もうとしているが、

 

手がもつれているらしく、結局新聞を床に投げ出して、ずり下がった眼鏡のまま、受話器をとった。

 

 

 

それを見て杏子は思った。

 

 

 

この人どれだけ緩んでたんだろうか?

 

 

 

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